「・・・・・・僕では兄さんの代わりにはなりませんか?」
「・・・・・・アルフォンス君・・・・・・・・?」
「僕にはあなたの記憶がないけれど・・・・。だけど・・・。だけど、なぜかあなたにそんな悲しい瞳をさせてはいけない。そう、強く思うんです」
「・・・・・・・・・・」
「それとも、僕では兄の代わりにもなりませんか?」
じっと自分を見つめる強い眼差しが、ふとロイの中でいまだ忘れることの出来ない少年の眼差しとだぶる。
ああ、やはり兄弟だな・・・眼差しが、とてもよく似ている・・・。
射抜くように見つめるアルフォンスの眼差しは、兄エドワードそのものでロイの心を強く揺さぶった。
たったこれだけのことで。
一瞬彼の瞳を思い出しただけで、こんなにも切なくなる。
いかに自分が彼を求めているかを、今更ながらに思い知らされてロイは泣きたくなる。
きっとアルフォンスがいなかったら、今頃泣き出していたことだろう。
弱い自分。脆い自分。
ともすれば、目の前に差し出された手にすがってしまいそうな自分を、ロイは必死に押しとどめる。
「何を馬鹿なことを・・・。私は、君を誰かの替わりにするつものなんてない。君はアルフォンス・エルリックっであって、
鋼の錬金術師エドワード・エルリックではない。君は君らしく、アルフォンスとして生きていけばいい。誰も君に兄の代わりなんて望んではいない」
「・・・・・・でもッ!」
今にも泣き出しそうな表情のまま、それでも自分を拒否するロイにアルフォンスの声が荒くなる。
「あなたは、そんな悲しい瞳をする人ではなかった!!」
そう叫んでから、アルフォンスは自分の言葉にはっとする。
では、どんな瞳だったというのだ。
この目の前で、今にも消えてしまいそうな儚げに笑う彼は、どんな人物で、どんなふうに笑っていた?どんなふうにしゃべっていた?
あと少しで思い出せそうなのに、思い出せないもどかしさにアルフォンスは小さく舌打ちする。
記憶はぼんやりと戻りつつあるというのに、肝心の部分には霞がかかってでもいるように、明確な形を一切成してはくれない。
「・・・・・・・・・・君も、今日は初めての配属で戦闘をこなしたのだ。きっと神経が高ぶっているのだ。さぁ。もう休みなさい。」
そう言い聞かせるように告げるロイの言葉は、やんわりとアルフォンスを拒絶して。
これ以上私に関わるなと告げるロイに、アルフォンスは傷ついたような表情を浮かべる。
しかし、これ以上の詮索は無駄だと悟ったのか、ぐっと唇をかみ締めると小さく頭を下げた。
「おやすみなさい」
「ああ。おやすみ」
そのままクルリと背を向けて去っていく背中を、ロイは黙って見つめていた。
緋色のコート、長い金髪の髪。
兄と違ってみつ編みにはしていないが、兄と瓜二つの後姿。
疲れたようにため息を落として、壁に寄り掛かったロイはそのままずるずると崩れ落ちていく。
アルフォンスの何もかもが、彼の兄エドワードを思い出させる。
彼はアルフォンスであって、エドワードではないのに。
今日はかわせたけれども、いつか彼に縋ってしまいそうな自分が怖かった。
「・・・・・・・・弱いな、私は。」
自らの弱さをあざ笑うかのように、ロイは自嘲気味にそう呟いた。
END
・・・・・・って、どこなんですか、ここわッ!
という突っ込みどころ満載でお送りしました(笑)
いや、大佐(映画じゃ大佐じゃないけど)のいる前線基地とやらに、
アルが来て一緒に戦ってくれたらいいなーvなんて思って。
いいんです。そんなんありえないのは、良く分かってますから、突っ込まないでください。
エド×ロイ←アルとかって萌えだなぁ・・・。
記憶もないまま、大佐を大切にしたい一心で迫るアルと。
兄とは違うと分かっていつつ、アルに縋りたい大佐(どこの未亡人ですか)
も・・・萌え・・・。