学園物Ver 副題「少年よ大志を抱け(笑)」
「おかえり。エドワード」
そういって玄関でエドワードを迎えたロイは、エドワードの頬にちゅと可愛らしい音を立ててキスをおくる。
「ただいま。今日も浮気をしないでいい子にしていたか?ロイ?」
可愛らしい妻からのキスに満足そうに微笑みながら、さりげなくロイの腰に手を回して抱き寄せたエドワードは自分の妻を覗き込む。
「・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・ロイ?」
むっとした様子で黙り込んでしまったロイを、エドワードはどうしたのだと見つめる。
「私にはエディしかいないといつも言っているのに・・・どうして、そうやって私を疑うのだ?」
瞳に微かに涙を浮かべ、エドワードをじとっと睨むロイの姿は例えようもなく可愛い。
思わずクスリとエドワードが笑うと、ロイは馬鹿にされたとでも思ったか、怒ったようにエドワードの腰に回った手から逃れようともがきだした。
「なんでそこで笑うんだ!」
「ごめん。ごめん。あんまりにもロイが可愛いこと言うからさ〜」
「なッ!別に私は可愛いことなど・・・・ッ!!」
ますます暴れだすロイの顎を掴んで、エドワードはロイの唇を塞ぎ文句を封じ込める。
「ちょ・・・・エディ・・・ふ・・・ん・・・んんっ」
こんなことでは誤魔化されないとじたばたと暴れても、執拗なエドワードの口付けに徐々にロイの身体から力が抜けていく。
「ふ・・・ぅん・・・・」
歯列を割って舌を絡め取れば、ロイは鼻に抜ける甘い悲鳴を漏らす。
吐息さえも奪う激しい口付けに、カクンとロイの足から力が抜けてその場に崩れ落ちる。
その拍子に唇が離れて、漸く空気を取り戻したロイは荒い呼吸を繰り返す。
「もぅ・・・・いつも、こんな風に誤魔化して・・・卑怯だぞ・・・・」
床にぺったりと座り込んだまま、ロイはエドワード見上げて悔しげに唇を噛む。
「もしかして・・・・キスだけで感じちゃった・・・・?」
同じようにしゃがみこんで、視線を合わせたエドワードはニヤリと笑う。
「〜〜〜〜〜ッ!!!!」
まさに図星を突かれて、ロイが瞬時に赤くなる。
「そういうときはどうすればいいか。教えた・・・・よな?」
意地の悪い笑みを見せながら自分を見つめるエドワードに、ロイは困ったように視線を彷徨わせる。
エドワードが何をいいたいかは分かっているが、それを口に出すにはどうにも恥ずかしいという思いが拭い去れない。
「ま・・・、俺は、別に無理にとは言わないけど」
「まっ・・・・・待って、エディ!!」
立ち去ろうとするエドワードのスーツの裾を慌てて掴んで、ロイはエドワードを引き止める。
「ロイ?」
「・・・・・・・・・・・・いて・・・・・ほし・・・・」
「聞こえない」
俯いたままぼそぼそと呟くロイに、エドワードは冷たくいい放つ。
言葉にしなければ望みを叶えてもらえないと分かったのか、ロイは諦めたようにエドワードを見つめた。
「・・・・・エディ・・・・抱いて欲しい・・・・」
これ以上はないと言うほど赤くなりながら、ロイはエドワードの望む言葉を紡ぎだす。
満足げに頷いて、エドワードは再びロイの頬に触れた。
「そう・・・そうやって素直になれば、いくらだって抱いてあげる・・・」
「あ・・・・・」
強い眼差しに見つめられて、ロイは視線が逸らせなくなる。
そのままエドワードはゆっくりと唇を近づけて・・・・・・・・・・・---------------。
「・・・・・・・・・・兄さん」
「・・・・・・・・・・・・ロイは、本当に可愛いなぁ・・・・」
「ちょ・・・・兄さんってば!」
一向にあっちの世界から戻ってこないばかりか、どんどん顔の崩れていく兄にだめだこりゃとため息を落としたアルフォンスは、
鞄から国語辞典を取り出すと、容赦なく兄の頭へとめがけて振り下ろした。
「いつまで続けてるつもりなのッ!!」
「ぐぇ!!!」
言葉と共に国語辞典で殴られて(しかも角)、エドワードは蛙がつぶされたような何とも情けない悲鳴をあげる。
「痛ェな!!何すんだよぉぉおおぉぉぉ!?アルぅぅぅうううぅぅぅぅ!!!」
ジンジンする後頭部をおさえながら、振り返ったエドワードが恨めしげに弟を睨む。
「・・・・・・・・あのねぇ、兄さん・・・・」
兄とは別の意味で痛む頭をおさえながら、アルフォンスはため息を落とした。
「僕が聞きたいって言ったのは、兄さんの将来の夢の話!!!誰が兄さんの妄想聞きたいって言ったのさーーーーーーーーッ!?」
いつもと変わらない平和な通学路に、延々とエドワードの将来の夢(というより、ありえない妄想)を聞かされ続けた、可哀相なアルフォンスの絶叫が響きわたる。
不用意に将来の夢などと言うものを、兄に聞いてしまった自分が悪いのかも知れないが。
だからって何が哀しくて、18歳未満お断りな妄想をこんな清々しい朝のしょっぱなから延々聞かされ続けねばならないのか。
「も・・・・妄想とは、我が弟ながら失礼な奴だな!これは妄想じゃなくて、やがてやってくる将来の予想図だ!」
「兄さん・・・・・」
現実をもう少し見つめようよ・・・と言ってやりたいところだが、そんな一言で大人しく現実を見つめてくれるような兄だったら、アルフォンスは苦労は無いわけで。
どう考えても、あのマスタング先生が甘えてくるって事はないと思うと、言うだけ無駄だと悟っているアルフォンスは心の中で突っ込みつつガクリと肩を落とした。
「本当に・・・・、弟として兄さん恋は応援したいけど、なんだか最近マスタング先生が可哀相に思えてきたよ・・・」
あの手この手で、アタックされまくってるロイの姿を思い出して、思わず遠い目になってしまうアルフォンス。
「何を言う弟よ!!いずれロイをお前にも義兄さんと呼ばせてやるからな!楽しみに待っていてくれ!」
「・・・・時々、兄さんのその自信がどっからくるのか、聞きたくなるよ・・・」
うざったいほどきらきらと光輝きながら力説する兄を適当にあしらいながら、ロイが聞いたら卒倒しそうな兄弟の会話は続いていく。
・・・・・・今日も街は変わらず平和だった(ごく一部を除いて