ホムンクルスとの捕り物劇を終えて。
軍部に戻ったロイに待っていたのは、大量の報告書の山で。
どうにかそれらを片付け、ロイが自宅に戻ってきたのは、とっくに日付が変わった時刻だった。
「ふぅ・・・・・」
上着をソファに放り出し、疲れたその身を横たえたロイは、小さくため息を落とす。
結局今回の騒動では、何一つ収穫は得られなかったけど。
あれだけの戦闘をしておいて、怪我人だけで済んだのは奇跡的だと今更ながらに思う。
甘いと言われようがなんだろうが、やはり人の死はいつまでたっても慣れる事などできるはずもない。
戦いに犠牲はつき物だと頭では理解していても、極力犠牲は出ないようとっさに考えてしまう自分はもはや否定のしようが無い。
例えロイにとっては名も知らぬ兵士だろうと、その人物が死ぬことによって悲しむ人間は間違いなくいるのだから。
「しかし・・・・彼は、中々の逸材だな」
結果として力を暴走させてしまったが、あれだけの錬成を指輪の補助を借りたとはいえ、やってのけたのだ。
彼の中に眠る素質は、国家錬金術師として、十分に足るものであろう。
ホムンクルスを達を逃がしてしまったと、ただひたすらロイに頭を下げていた国家錬金術師見習いの姿を思い出して、ロイはクスリと笑う。
「いずれ・・・・・・彼が晴れて国家錬金術師の資格を取得したなら、是非手元におきたいものだ」
彼ならきっと、かの有名な鋼の錬金術師に勝るとも劣らない、錬金術師に成長してくれるだろう。
そこまで思い出して、ロイはふとあっさりと旅立ってしまった少年の姿を思いだす。
捕らわれていると聞いて、表情には出さずとも随分とその身を案じていたというのに。
あの広い神殿を駆け巡り、漸く姿を見つければエドワードは危機的状況で。
まさにあの女の鋭い爪がエドワードに突き立てられようとした瞬間を目にして、どれ程こっちは寿命が縮んだと思っているのだか。
ろくに話もすることもないまま旅立ってしまった少年を恨めしく思っても、あの周りに大勢の人がいた状況ではエドワードを引きとめることなど出来るはずもなく。
振り返ることもなく旅立ってしまった小さな背を思い出して、今更ながら腹が立つ。
「全く、鋼のはちょっとせっかちすぎるぞ・・・・」
一刻もはやく弟の体を取り戻したいその気持ちは分かるけど。
何もそんなに、自分と言葉を交わす暇もないほど急いで行ってしまわなくたって。
ふつふつとロイが怒りを込みあがらせていた、その時。
不意に、控えめに窓を叩く音がロイの耳へと届いた。
一瞬風かとも思うが、それにしては規則正しく窓は鳴り続けている。
「泥棒・・・・は、入る前にわざわざ知らせてはこないか」
ではこんな夜更けに誰だと首を捻りながら、ソファから立ち上がったロイは窓へ近寄るとカーテンをそっとめくった。
「鋼のッ!?」
カーテンをめくった途端、月明かりの中にこっと微笑みながら手をあげる少年の姿が視界に飛び込んできて、ロイはらしくもなく動揺しながら慌てて窓を開ける。
「よぉ、大佐」
「鋼の・・・・・、君は旅立ったはずでは・・・・・・・」
今さっきまで、自分に声もかけず旅立ってしまった少年を思っていただけに、ロイの声は僅かに上ずる。
「ん〜そのつもりだったんだけど・・・・。でも、やっぱりあんたに触れたくて戻ってきちまった。ね?入ってもいい?」
ロイの動揺に気づいているのか、いないのか。
のんびりとした口調で告げてエドワードがロイを見上げる。
「あ・・・・ああ、それは構わないが・・・。いま玄関を・・・・」
「あーいいよ。いいよ。ここから入っちまうから」
取り敢えず玄関に回れというロイを遮って、窓枠に手を掛けたエドワードは、ひらりと窓からロイの自宅へと侵入を果たす。
重い機械鎧をつけているにも関わらず、その重力を感じさせない軽い身のこなしに、ロイは一瞬瞳を奪われる。
「・・・・・・鋼の。君のその行儀の悪さはどうにかならんのかね・・・」
一瞬とは言え見蕩れてしまったのが悔しくて、ロイはわざとエドワードに小言を言う。
「んー。ああ悪いな・・・・・・」
しかしその言葉に返ってきたのは、気のない返事で・・・。
おや。と。
ロイはそこに至って、エドワードの様子が変なことに気がつく。
(落ち込んでる・・・・・というわけではなさそうだし、確かに派手な立ち回りをしたが、鋼のがあれぐらいで疲れるとは思えないし・・・・)
「なんだよ」
思わずまじまじとエドワードを見つめてしまって、その視線に気がついたのかエドワードか不機嫌そうに振り返る。
「鋼の・・・・・・」
もしかして・・・と思いつつ小さくその名を呼べば、ギロリと黄金の瞳が見上げてくる。
「何?」
その態度に、ロイはエドワードの感情を理解して、小さく尋ねた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・もしかして、何か怒っているのか?」
「へー。分かるんだ」
そう言うエドワードの声音は不機嫌そのもので、予想以上のエドワードの怒りにロイは少し驚く。
「・・・・・・・・・ついでに、なんで俺が怒ってるのか分かる?」
しばし己の行動を振り返ってみるも、どう考えてもロイにはエドワードを怒らせた要因が思いつかない。
「いや・・・・・」
小さく頭を振るロイに、エドワードはむっと唇を尖らせる。
ますますエドワードの機嫌を悪くしてしまったのを察して、ロイは慌てていいわけをはじめる。
「そ・・・・・そんな事を言われても、今日は君は私と話をすることもなく旅立ってしまったではないか!一体私がいつ君を怒らせる暇があったというんだね!?」
全く分からないというロイに、元々気の長い方ではないエドワードの堪忍袋の尾は簡単にプツリと切れて。
「あーもうッ!どうしてそんなに鈍感なんだよ!!」
そう叫ぶと、ロイの胸倉を掴み強引に引き寄せると、己の唇でロイの唇を塞ぐ。
「むぐ・・・・ッ!ちょ・・・・は・・・・がね・・・・」
口付けと言うよりは、噛み付くようなその勢いに、ロイは慌ててエドワードを引き剥がそうとしても、エドワードはびくりとも動かないどころか、更に激しく唇を合わせてくる。
歯列を割って強引に入り込んでくる舌に、ロイは形のいい眉を眇めても、吐息も奪うほどの激しい口付けにだんだん視界に霞がかかってくる。
「ん・・・・・・ふぅ・・・・・ん・・・・・・」
ぴちゃぴちゃと、お互いの唾液を混ぜる音が否応無しにロイの快感を煽って、意識する間もなく、唇からは甘い吐息がもれる。
こんなに無理矢理に触れられても、それでも相手が好いた相手だというだけで、素直に反応してしまう身体が恨めしい。
エドワードといえば、無心にロイの唇を貪るばかりで、一向にその執拗なまでの口付けを止めようとはしない。
「ふ・・・・・・・」
長い口付けにいよいよロイの身体から力が抜けて、ロイはエドワードにのしかかられる形でソファへと倒れこむ。
「ふ・・・・ふぁ・・・・は、鋼の・・・・・・」
「ん?」
散々貪られた舌は呂律が上手く回らなくて、些かたどたどしくロイは自分を組み敷く少年の名を呼んだ。
「ま・・・・・まさかとは思うけど、ここでするつもりじゃ・・・・・・」
「まさかもなにも、ここまで濃厚なキスしておいて、はいさよならなんてするわけないだろう?」
恐る恐る尋ねた言葉に返された言葉は、とても単純明快で。
やる気満々なエドワードに、ロイはさーっと青ざめていく。
「ま・・・・まてまて、鋼の!!私は今日は戦闘で疲れているし、明日の朝も早いんだ!!だっ・・・第一、元々は君の機嫌が何故悪いのかという話をしていたのに、どうしてこういうことになるのだねッ!!」
じたばたともがいても、マウントポジションを取ったエドワードは一向に意に介さず、プチプチとロイのシャツのボタンをはずしていく。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
完全に据わってしまってるエドワードの瞳に、ロイはもはや抵抗は無意味だと思い知らされて、一体どうしてこんなことにと思いつつ、諦めて身体の力を抜く。
もうこうなってしまったら、エドワードが止まらないのは身を持って知っているし、抵抗は無意味だ。
ああせめて、ベットに連れて行って欲しかったなぁ・・・と、ロイがぼんやりと思っていると、不意にエドワードが動きを止めてじっとロイを見下ろしてきた。
「鋼の?」
さきほどまで怒りを滾らせていたはずの黄金の瞳は、いまは傷ついたような色を浮かべていて、その変化の激しさに、ロイの声にも戸惑いが混じる。
「傷・・・・・・つかなくて良かった・・・・・・」
心から安堵したように呟くエドワードの言葉に、ロイは一瞬なんの事かと思うが、直ぐにエドワードの言いたい事を察して、うっすらと微笑んだ。
「ああ。鋼の。君がしっかりと守ってくれたからな」
そっと手を伸ばして、エドワードの頬に触れながらロイがそう告げると、エドワードは意外そうに目を見開いた。
「・・・・・・・・・気がついてたんだ」
さも意外そうな口ぶりに、ロイはクスリと微笑む。
「いくら私でもあんな爆発に巻き込まれて無事で済むとは思っていないよ。鋼の、君がとっさに私の周りに防護壁を錬成してくれたんだろう?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「鋼の?」
「・・・・・・・あんたさ、あのホムンクルスにわざと捕まっただろ」
エドワードの言葉は、問いかけというより、断定だった。
とっさに否定しないロイの態度が、エドワードの考えが正しいことを物語る。
「・・・・・・・・それって、あの国家錬金術師見習いの本当の力を引き出すため?」
「彼は良い素質を秘めていたからな。あのまま眠らせておいては勿体無いと思って・・・・」
「だからって、あんな無茶な真似して!!」
ロイの言葉を遮って叫ぶエドワードに、ロイは驚いたようにエドワードを見上げる。
「今回は暴走とは言え、たまたまあいつの力が発動したからいいけど。もし、発動しなかったら、あんたあの後どうするつもりだったんだよッ!?あのまま、大人しく床にでも叩きつけられるつもりだったのか!?なんで?なんで初めて会ったあいつの為に、あんたそこまでするんだよ!!」
「鋼の・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
黙りこくってふいっと視線を逸らすエドワードに、ロイはその身を起こすとそっとエドワードを抱きしめた。
「ありがとう鋼の。私のことを心配してくれたんだね」
「だ・・・・・・誰がッ!」
あれだけあからさまに怒っておきつつ、いざ素直に礼を述べられると照れくさいのか、エドワードは慌てて否定をする。
「でも、あの場には、鋼のがいただろ?万が一彼の力が発動しなかったとしても、君がなんとかしてくれるかな・・・と思ってしまってね」
「あ・・・・・・あのな・・・・・・」
のん気なロイの言葉に、エドワードは思わず脱力して大きなため息を落とす。
「私は、君に甘えすぎなのだろうか・・・・・・」
可愛らしく首を傾げる姿は、とても29の男に見えなくて。
「だぁぁぁッ!甘えてくれるのはいいんだよ!俺のこと信頼してくれるのも嬉しいけどッ!!だけど、あんな無茶なことはするなって言ってるの!!・・・・・・・・・・・・それに」
「それに?」
不貞腐れたようなエドワードの様子に、ロイはまだ何か不満があるのかとその先の言葉を促す。
「あんた・・・・・・・あいつに、指輪あげただろ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」
予想外のエドワードの言葉に、ロイは思わず間抜けな疑問の声を上げてしまう。
エドワードの言う『指輪』とは、もしかしてもしかしなくても、国家錬金術師見習いにあげた、あの錬成陣の書かれた指輪の事だろうか。
はちはちとロイは瞬きを繰り返した後、ロイはふと思いついた疑問をそのまま口に出す。
「もしかして・・・・・鋼の、妬いてるのか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
顔を赤くしたまま視線を逸らしてしまったエドワードの態度は、ロイの言葉がほぼ正解だと肯定していて。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぷっ」
ロイは思わず小さく吹き出してしまっていた。
一体全体、何をそんなに怒っているのやらと思えば、そんな理由で怒ってくれていたとは。
「笑うな!!」
真っ赤になってしまったエドワードの姿が余計におかしいのか、ロイの笑い声はだんだんと大きくなっていく。
「お・・・・・俺だってなぁ!嫉妬深いって言う自覚はあるんだよ!!だけどあんたからもらった指輪って聞かされただけで、勝手に腹が立っちゃうもんは仕方ないだろ!!」
他人にそんなに親切にしてみせるロイに。
あまつさえ、自分さえ貰った事のない指輪(この時点でもはやエドワードの頭の中からは、この指輪は実戦用だという事実は綺麗さっぱりと忘れ去られているらしい)を、今日はじめて会ったばかりの見習い簡単に上げてしまうロイの姿に。
とにかく言いようもないほど腹が立って、腹いせにたいして口をきく事も無く旅立った。
しかし、いざ旅立ってみれば、触れるどころか、言葉もろくに交わせなかった恋人に未練ばかりが残って。
結局戻ってきてしまったのだから、なんとも情けないとエドワードは思わずにはいられなかった。
もはや、隠しても無駄とやけくその様に叫ぶエドワードに、ロイは漸く笑いを収めると再びエドワードへと抱きつく。
「鋼の。私が好きなのは、君だけだよ・・・?」
耳元で囁かれる、低音の甘い声にゾクリとエドワードの背を快感が抜けていく。
「・・・・・・・ん、分かってる。分かってるんだけど、やっぱりあんたが俺以外の誰かに優しくしている姿を見るのは、気に食わない・・・・」
こんな時ばかり、子供の我侭を振りかざすエドワードにロイは苦笑を零す。
「では、どうしたら、私は君のものだと分かってもらえるのかな?」
「・・・・・・・・・・触れさせて。あんたのすべてに・・・・・・」
誘うようなロイの言葉に、エドワードは真摯な眼差しで答えると、再びロイの唇に自分の唇で触れていく。
「・・・・・・・・・・んっ」
先ほどとは違って、そっとまるで壊れ物に触れるかの様に優しく触れてくる唇に、ロイは小さく笑ってエドワードの後頭部に手を差し入れると自分の方へと引き寄せる。
そのままソファに再び押し倒されて、エドワードが再び上へとのしかかってくる。
しかしのしかかりつつも、腕と足を使ってロイの身体へ全体重をかけないようにと、気遣う様がなんとも微笑ましい。
昔は容赦なく乗っかられていたものだが。
いやはや、子供の成長とは早いものだなと感慨深げにロイが思っていると、エドワードがロイを覗き込む。
「何・・・・・・考えているの?」
「君の事だよ・・・・鋼の」
確かにロイの言葉に嘘はないが、その内容は決して色っぽいものではない。
が、既に熱に浮かされているエドワードには、例えようもなく誘われている言葉に聞こえて。
顔を赤く染めたまま、エドワードは嬉しそうに笑って再びロイへと触れていくのだった。
「ん・・・・・・やぁ・・・・ッ!鋼・・・・のっ!」」
ソファに押し倒されたまま、大きく足を開かされてロイは小さく悲鳴を上げる。
年下の少年にすべてをさらけ出すこの瞬間は、何度経験していても沸き起こる羞恥心だけはどうにもならない。
「そんなに暴れるなって・・・」
じたばたと自分の下で暴れるロイに、エドワードは困ったように声をかける。
「ならしておかないと辛いのは、あんただろう?」
「っ!そ・・・・それは、そうだが・・・・!」
理屈ではわかっていても、恥ずかしいものは恥ずかしい。
それでもこの行為を止めようとは思わないのだから、自分もかなりこの子供に絆されてはいるのだろう。
「大丈夫だよ・・・あんたを傷つけるようなことはしないから・・・・」
安心させるように微笑んで見せて、エドワードはロイが制止をかける前に、既に緩く勃ち上がりかけているロイ自身をパクリとくわえ込む。
「んんッ!」
暖かい粘膜に敏感な箇所を包まれて、抱え上げられたロイの白い足がビクリと震える。
「あ・・・・・はぁ・・・・や・・・・・ッ!鋼・・・・の・・・・・・・・・」
そのままゆっくりと唇と手で扱われてロイの口から、細い悲鳴が上がる。
言葉とは裏腹に、とろとろと快楽の涙を溢れさせるロイ自身を舌で感じながら、エドワードは更に念入りに舌を這わせていく。
舌先で先端に触れ、丁寧に形をなぞっていく。
際限なくロイ自身から溢れるものと、エドワードの唾液が交じり合って、エドワードの行為をよりスムーズにしていく。
「あ・・・・あう・・・・ああ」
髪を振り乱し、この上なく乱れていく恋人の姿に、エドワードはうっとりと微笑む。
普段大佐然として、きびきびと仕事をこなしていく彼の姿も勿論好きだが、自分の手によって生み出された快感に打ち震える姿は例えようも無く美しいと、エドワードは思っている。
この姿を見たことがあるのも、見ることが出来るのも自分だけの特権でで。
この先も絶対にこの特権は誰にも渡さないと、どうしようもない独占欲が沸き起こってくる。
「あ・・・・んんっ・・・・・・」
「気持ちいい?」
耐え切れない快楽にとめどなく声を漏らすロイに、戯れにエドワードが声をかければ、ロイの快楽に濡れた漆黒の瞳がキッとエドワードを睨みつけてくる。
そんなこと聞くな!と雄弁に語る瞳に、エドワードはクスリと笑いを零す。
この人はその瞳がどれ程男の慾を煽るかなんて、微塵も分かっていないのだろう。
いつもは冷たい輝きを放つ黒曜石の瞳が熱に解けた姿は、すべての手順をすっ飛ばして、ただその身体を食らい尽くしたいという凶暴な感情を呼び覚ますには十分で。
誘うような瞳に、そのまま既に十分な熱を持っている自身を突き立てたいという欲望に駆られながら、それを誤魔化すようにエドワードは軽口を叩く。
「ホント、大佐って意地っ張りだよね・・・。いいよ、じゃあ、こっちに聞くから」
そう言ってエドワードは、再びロイの下肢に顔を埋めて、再び自身をくわえ込む。
と、同時に既に先走りの液が流れて、しとどに濡れたロイの最奥につぷりと、自身の唾液とロイの先走りに濡れた指を突き立てる
「んんッ!」
その刺激に、ロイは怯えたように身体をすくませるが、それも一瞬のことで。
ゆっくりと侵入したエドワードの指が、既に知り尽くしたロイのいいところに触れると、身体から力が抜けていく。
「あ・・・・あん・・・・や・・・やぁ、鋼の!!」
容赦なく感じるところを攻めるエドワードに、ロイは悩ましげに腰を揺らしながら、甘い抗議の声を上げる。
ただでさえ敏感な身体なのに、自身と最奥と同時に攻められてはたまらない。
どんどんと大きくなっていく水音が、もはや限界が近いのだと、ロイに教えている。
「や・・・・っ!鋼の!!も・・・・はな・・・・・」
エドワードの口の中に欲望を放つのはためらわれて、ロイはどうにかエドワードの頭を離そうとエドワードに手を伸ばすが。
エドワードは離すどころか、更に激しく舌を絡めてくる。
「や・・・・・、鋼・・・・・・ッ――――ッ!!!」
カリっと自身に軽く歯を立てられて、ロイはなすすべも無くエドワードの口内へ欲望を放ってしまう。
「あ・・・・・はあっ・・・・・はぁ・・・・・・・」
目の前がチカチカするような絶頂後の開放感に、ロイは荒い呼吸を繰り返す。
ぐったりとしたロイを満足げに見下ろしながら、エドワードは飲み込みきれず口から溢れたロイの放ったものを指で拭うとそれをペロリと舐めた。
その仕草を真っ赤になって見つめるロイに、エドワードは再びのしかかり無邪気に問いかけてみる。
「気持ちよかった?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
答えないロイに、初めから答えは期待していなかったのか、エドワードは再び最奥へと手を伸ばしてくる。
「次は俺の番・・・・だよね?」
そう問いかけてくるエドワードに、ロイはためらいを残しつつもゆっくりと頷く。
その仕草に満足そうに笑って、エドワードはゆっくりと熱く滾る自身を、ロイの最奥へとあてた。
「あ・・・・・」
指とは質量も熱さも違うその存在に、ロイはかすかに不安げな声を上げる。
「ゆっくりするから、力抜いてて・・・・・」
耳元でそう囁いて、ロイの唇にそっと自分の唇でエドワードは触れる。
「ん・・・・んぅ・・・・・」
ロイが口付けに気を取られている間に、エドワードはゆっくりとロイの中へ自身を埋めていく。
「は――――うっ・・・・・・ふっ・・・・・・・・・・」
少しずつ入り込んでくる熱塊に、ロイの唇から苦しげな声が漏れる。
その声にエドワードの胸がチクリと痛むが、今更止めることも出来なくてエドワードは動きを止めることなく、すべてをロイの中に埋めていく。
「あ・・・・・はあ・・・・・・あ・・・・・・は・・・・・・」
少しでも楽になろうと浅い呼吸を繰り返すロイに、自身をすべて埋め込んでもなお、エドワードはロイの身体が慣れるまで辛抱強く動きを止めて待つ。
エドワードは少しでもロイの気を散らせようと、額に、眦に、頬に、鼻に、口付けの雨を降らせていく。
しばらくそうしていると、ロイが短く息を吐いて小さくエドワードの名を呼んだ。
「は・・・がねの・・・。も、大丈夫だから・・・」
「もう、動いて平気?」
コクリと頷くロイに、エドワードはゆっくりと埋め込んだ自身を引き抜いていく。
「あっ・・・・・・・・あ・・・・ああっ」
ロイはエドワードの背に縋りつき、その刺激を受け止めている。
その背をきつく抱きしめて、エドワードはゆっくりと律動を早めていく。
「あ・・・・ひぅ・・・・あ・・・・、やぁ・・・・」
過ぎる快感に怯えるロイに、もっとゆっくりしなければと頭の片隅では思っても、熱く絡みつくロイの内壁にエドワードの理性は脆くも崩れ去っていく。
「ごめ・・・・大佐ッ!ゆっくりしなきゃいけないのは、分かってるけど・・・・ッ」
もはや限界だと切なく訴えるエドワードに、揺さぶられたままロイは小さく頷いた。
「いい・・・、わたし・・・はっ、大丈夫だから・・・ッ」
だから君の好きなように、と微笑むロイに、エドワードは動きを止める。
辛くないはずなど無いのに。
それでも、自分を甘やかしてくれるロイに、エドワードの中で愛しさが溢れていく。
「好き。大好きだよ、ロイ」
そう告げてエドワードはロイを蹂躙する動きを再開する。
「ん・・・・んうっ!は・・・がねの・・・・・」
縋りつく手に背中を引っかかれて、その痛みすら甘く感じながら、エドワードは間もなく訪れるであろう高みへと一気に上り詰めていく。
「も・・・・だめ・・・・・」
そう告げたのは、果たしてどっちらの言葉だったのか。
身体の一番奥にエドワードの熱い欲望の証を受け止めて、ロイの意識はゆっくりと闇の中へと飲まれていった。
「ん・・・・・・・・」
ぼんやりとロイが目を開くと、その瞳には見慣れた寝室の天井が映っていた。
「何時だ今・・・・・?」
また薄暗い室内に、夜が明けていないのは分かるが正確な時間は何時だろうと、ロイはゆっくりと身を起こす。
「うっ」
その瞬間腰に走った鈍痛に、ロイは思わず顔をしかめる。
なんでこんなに腰が痛いんだと思いながら、そういえば自分はいつの間に寝室に移動したんだ?とロイの中で疑問がわき起こる。
「・・・・・・・鋼の?」
そしてまだはっきりとしない思考のまま、ぐるりと室内を見渡せば、自分のとなりでちゃっかりと眠りについているエドワードの姿が飛び込んでくる。
エドワードの姿を捉えて、漸くロイの中で昨日帰宅してからの記憶が一気に思い出される。
そうだ、昨日夜更けに鋼のが尋ねてきて・・・・それで・・・・・・。
そのまま思い出さなくていいことまで思い出して、ロイはかぁぁと一人赤くなる。
「しかし・・・・まさか、あの国家錬金術師見習いに妬いていたとは・・・・」
戦場では錬成陣を書いてる暇が無いからと、他意も無く渡した指輪に嫉妬をされるとは、夢にも思わなかった。
あんなものには、何の拘束力も無いだろうに。
「君は指輪が欲しかったのか?」
熟睡しているエドワードに問いかけても、返事などあるはずもないけれど。
返ってくるのは、くーくーという安らかな寝息ばかりだ。
「でも立場上、指輪を渡すとしたら、私からではなく、君からではないのか?」
エドワードが寝ているのをいいことに、ロイは冗談めかしてそう問いかける。
我ながら何を言っているんだと、自分の言葉に笑いながらロイが時計をみれば、時計の針は午前4時にもなっていなくて。
どうやら行為の後始末はエドワードがしてくれたらしく、すっきりとした身体に今すぐシャワーを浴びる必要もないと判断したロイは、もう少しだけ眠ることにする。
ホムンクルスの戦いの後、エドワードに抱かれた体はまたまだ休養を欲しているらしく、体を横たえた途端心地よい睡眠がおとずれる。
それに逆らうことなく、眠りに落ちていってしまったロイは気がつかなかった。
実はエドワードが、ただ寝た振りをしていただけだということに。
なんだあんたこれが欲しかったのか〜。言ってくれれば直ぐにでも用意したのにと、にこにこと恐いほどの笑顔を浮かべて、婚約指輪を持ったエドワードにロイが追いかけまわされるのは、また別の話である。
END
