「全く・・・。何を突然言い出すかと思ったら・・・」
「えー、いいじゃん〜。せっかくの休みの日に、家でじっとしてるのなんて勿体無いって!!」
呆れたようなロイの言葉にも、エドワードは全く引くつもりは無いらしい。
テーブルに身を半分以上乗り上げ、ロイを覗き込んでくる。
「・・・・・・・・」
「どしたの大佐?」
その至近距離に思わず顔を赤らめるロイに気がつかず、エドワードは首を傾げる。
「と・・・とにかくだ!鋼のの遊びに、私は付き合う気などない!!」
エドワードの顔を両手で押し戻しながら、ロイはキッパリと告げる。
しかし、エドワードは難なくロイの両手首を掴むと、あっさりと言い放った。
「あ、鋼のはまずいっしょ」
「は?」
「だからー。俺よりも年下の子供が、偉そうに鋼のって呼ぶのは外ではまずいだろ?」
「鋼の・・・。君は人の話を聞いて無かったのかね?私は最初から外になど行かないと言っているだろうッ!!」
まるきり話のかみ合わない会話に脱力しつつ、ロイはエドワードに掴まれたままの手を振り解こうと、腕に力を込める。
「ふーん。そっかー。大佐は俺と外に行きたくないんだー?」
「鋼の?」
掴んだ手首は離さないまま、意味ありげに笑うエドワードに、思わずロイは抵抗をやめてエドワードを見つめる。
「じゃあ、俺は別に家の中にいてもいいけど。でも大佐壊れちゃっても知らないよ?」
「な・・・・何を言って・・・・」
「こんな小さい身体で大丈夫かな〜?」
そういいながらエドワードは、パジャマの上着からスラリとはみ出した、ロイの太ももに左手を滑らせる。
「やッ!は・・・鋼のどこを触っている!!」
ビクリと身体をすくませて、ロイは慌ててエドワードの左手を押し返そうと、右手の小さな手のひらでエドワードの腕を掴む。
しかし、元の大きさがあっても、純粋な腕力比べとなれば分が悪いロイに、身体まで小さくなった今、エドワードに敵うはずなど無い。
エドワードの左手はロイの抵抗などお構い無しに、するするとロイの太ももを上がってくる。
「あんたさぁ・・・自分が今どういうカッコしてるか分かってる?」
「んん・・・ッ!やぁ!鋼のッ!!」
立ち上がったままのロイを、完全にテーブルに乗り上げたエドワードが、しっかりと抱きしめて耳元で囁けば、ロイはビクビクと身体を弾ませる。
かすかな刺激にさえ反応する己の身体に、ロイは驚いたように目を見張る。
元々敏感な身体ではあったけれども、子供になったことでより敏感になってしまったらしい身体に愕然とせずにはいられない。
こんな身体で抱かれれば、一体どんなことになるのか。
考えただけで、恐ろしい。
「そんなに色っぽい格好しているのに、無防備でさ。襲ってくれって言わんばかりじゃん?」
「ば・・・馬鹿者!!君は子供相手に何を言っているんだ!!」
青くなってロイは必死にエドワードの説得を試みるが、エドワードにはどこ吹く風。
「だって中身はあくまで29の大佐だし。見た目なんて関係ないよ、俺は大佐が好きなんだから。外見がどんな姿だろうと、大佐であれば全然オッケー」
にこっと、笑って言われる言葉の恐ろしさに、ロイの背を冷たいものが流れていく。
「じょ・・・・冗談だよな?鋼の」
「俺はいたって本気です」
かずかな希望を込めていった言葉も、あっさりと否定されてしまって。
「わ・・・分かった鋼の!!行く!!外でも何でも付き合うから、取り敢えずこの身体にさわるなッ!!」
ロイはついに半泣きになりつつ、叫んでいた。
「あれー行く気になったの?俺としては別にこのままでも・・・」
あれほど外に行きだがっていたくせに、ロイの身体にちょっかいを出してみたら想像以上の反応のよさに、エドワードの中ではデートの件は二の次になっていたらしい。
残念そうにロイを拘束する手を離す。
「あ・・・当たり前だ!若者がせっかく天気のよい日に、家の中にくすぶっていてどうする!」
ロイは赤く染まった頬もそのままに、既にいつの間にかいくつか外されていたパジャマのボタンを留めていく。
油断も隙もあったものではない。
全くエドワードの早業には、目を見張るばかりだ。
「そっか・・・。じゃあ、大佐も出かける気になったところで、出かけるか」
まぁ、続きは夜にでも・・・という物騒な呟きは心の中だけにして、エドワードは大きく頷く。
「っと、その前にまずは服の調達だよな・・・」
ロイの姿をしげしげと見つめて、エドワードが言う。
「服?鋼のを借りるわけには行かないのか?」
最初からエドワードの服を借りるつもりでいたらしいロイが、首を傾げる。
「そりゃ、俺の服を貸してやったっていいけどさ。多分大佐には合わないと思うよ」
「そうか?そんなことは無いと思うのだが・・・」
自分の姿をしげしげと見つめる姿さえ、何だか可愛らしくてエドワードはクスリと笑いを零す。
「いや、外見の話じゃなくってさ。大佐は俺ほど筋肉がついてないから、多分生地余るぜ?」
エドワードの言うことはもっともで。
ロイは普段かっちりとした軍服を着込んでいるせいで分かりにくいが、ロイは軍人とは思えないほど細い身体をしている。
華奢と言うわけではないのだが、しなやかに鍛え上げられた身体にそれなりの筋肉はついていても、如何せん毎日弟との組み手の鍛錬を怠らないエドワードとでは比べるべくも無い。
「取り敢えず外に行くには俺の服を着るしかないだろうけど、やっぱりどっかで買ったほうがいいだろ」
「ふむ。仕方ないな・・・」
エドワードの説得に、ロイはしぶしぶと頷くのだった。